第1章 はじまり
がたり。
おもむろに立ち上がった灰羽くん。
その雰囲気は、いつものにこにこかわいい後輩のものではない。
「それ、なんなんすか…
俺、椎名さんより数年産まれるの遅いだけで俺自身にすら興味持ってもらえないんですか。」
近くにあったテーブルにコーヒーを置いた灰羽くん。
そのままゆっくり私に近づいてくる。
オトコだった。
年下、とか
後輩、とか
そんな問題ではない。
鋭く光るグリーンの瞳が
私を射抜いて離さない。
「はいばくん、だめ…」
「椎名さ…文乃さん、好きです。」
逃げなきゃ。
そう思うのに
体が、動か、ない。
いつのまにか灰羽くんは私の目の前。
手の中のコーヒーは、いつのまにか、ない。
「文乃さん、俺のものになってよ。」
射抜かれ、動けない体を灰羽くんが包む。
だめなの。
そう、口に出そうとした時
唇が
重なった。