第6章 ご対面。
side灰羽。
話は進んでいった。
通っていた大学の話から仕事の話。
聴く音楽の話など、椎名さんの旦那さんは話を広げるのが本当にうまかった。
「椎名さんの旦那さんは…」
そう呼んだ時、きょとんとした椎名さんの旦那さん。
「ああ、そっか。文乃、会社では椎名さんなのか。
俺のことは菅原さんとかスガさん、孝支さん。
なんて呼んでもいーから。」
かたっくるしいべ?椎名さんの旦那さんなんて。
そう言われて少し悩み、俺は旦那さんを菅原さんと呼ぶことにした。
ーーーーーー
ある程度酒が進み、追加した料理もあらかたなくなった頃。
話を聞いているうちになんとなく聞きたくなったことがある。
俺はそれを菅原さんに聞いてみることにした。
「あの、菅原さんと椎名さんの出会いとかってどんな感じなんですか?」
そう聞けば、菅原さんは照れたように笑い、話し始めた。
「初めて会ったのは大学1年の時。
付き合い始めたのは次の年…
それからだから、もう5年になるのか…」
5年…
想う年数が違いすぎる。
この人には敵わないのかもしれない。
そう思うけれど、それでも話を聞かなければ…そう思う。
「ちなみに文乃の初めては、全部俺な?」
「…は?」
何を聞いたかわからなくて、俺は顔を上げた。
柔和な顔して笑う年上のお兄さん。
そんな菅原さんは、いつのまにかいなかった。
冷たい目で、俺の瞳を捉えた菅原さん。
もう俺は、目をそらすことも声を発することもできなくなっていた。