第6章 ご対面。
side灰羽。
案内された部屋は、壁と扉で仕切られた個室だった。
マジかよ…個室なんて聞いてない。
来てしまったものはしょうがない。
とりあえず中に入り、椎名さんの旦那さんの向かい側に座る。
「今日はわざわざごめんな?」
「いえ…」
「何頼む?嫌いなものある?」
「特には…」
じゃあ…と椎名さんの旦那さんは俺に質問しながら何種類かの料理をピックアップする。
そして注文し終わると、椎名さんの旦那さんが俺を見た。
何を聞かれるのか、と緊張して背筋がぴんと伸びたのに気づいたのかふにゃりと顔を綻ばせ俺に声をかけた。
「別に上司との飲み会じゃないんだし気楽にいくべ?
背中、力入れなくていーから。」
「あ…はい。」
こわばった顔。
力の入った背中。
力を抜けと言われてもすぐには抜けない体の力。
俺は早々に来たアルコールを一気に飲み干し、少しだけ力を抜いた。
改めて自己紹介をお互いにしていれば、少しずつ料理が机に並び始める。
刺身の4点盛り、ふわふわの卵焼き、ポテトフライに竜田揚げ、シーザーサラダなど、苦手な人があまりいないであろう料理。
この人は人への気遣いがすごくできる人なんだなと料理1つで感じてしまう。
飲み干したアルコールのお代わりが来たところで、椎名さんの旦那さんが自分のジョッキを俺に向ける。
「無理言って来てもらってありがとうな?
じゃあ、改めて乾杯。」
がちり
少し重たいジョッキの合わさる音が、部屋に鳴った。