第6章 ご対面。
side灰羽
椎名さんが午前中半休を取った日。
前日に旦那と一緒に歩く椎名さんを見たからかものすごく気分が悪い。
そんな状態だったため、お昼は1人になれる外に出た。
そんな時だった。
知らない番号から電話がかかって来たのは。
知らない携帯番号なんて怖くて出る気にもならないけれど。相手はご丁寧に留守番電話を残してくれていたらしい。
留守番電話を聞いた俺は余計に憂鬱になる。
”こんにちは、文乃の旦那の菅原孝支です。
いつも文乃がお世話になってます。
その件で1度君と話がしたいんだけど…
早ければ今日の仕事終わりに時間、取れないかな。
連絡待ってます。”
なぜ椎名さんの旦那から連絡が来るんだ。
もしかして、椎名さんとの関係がバレた…
いや、椎名さんとはあの旅行の時点で関係が切れたはずだ。
じゃあなぜ…
俺はとりあえず人気の少ない場所に移動し、先ほどの番号に電話を入れる。
2コール、3コールの後、繋がる電話。
瞬間的に背筋が伸びる。
”もしもし、灰羽くん?”
「はい、灰羽リエーフです。」
”急に連絡してごめんな?びっくりしたべ。”
「まあ…」
心臓に悪いから早く要件を伝えて欲しい。
その気持ちが伝わったのか、菅原さんは要件を言い始めた。
”いや…最近文乃の様子がおかしいんだ。常にぼーっとしてるし。
今、文乃の一番近くで働いているのは灰羽くんだべ?
だから何か知らないかと思って。”
「いや…」
”っていうのは建前で、仕事中の文乃のこと教えて欲しいってのはある。”
この人、俺の逃げ道を塞いだ。それもわざと。
仕事中の文乃のことを1番知っているのは俺。
だから話を聞かせろ。
逃げるな。
そう言いたいんだろう。
今の時点で俺がNOと言える可能性は0%
断ることはできない。
「…わかりました。俺は仕事終わりならいつでも空いてるので、菅原さんに合わせますよ。」
そう伝えれば椎名さんの旦那さんから本日の夜7時半、有名な繁華街のある駅の居酒屋に来るようにと伝えられた。
あと、椎名さんにはこのことはくれぐれも秘密だということも。
了承して電話を切ると、どっと力が抜けた。
仕事が終わるのが憂鬱でしょうがない…