第5章 平穏な、日々
side菅原
おかしい。
確か出張だって、土日留守にした時から…だったかな?
常に何か考えてるっていうか、ぼーっとしてるっていうか…
今だって珍しく俺の腕の中でうとうとしてる。
文乃は俺が甘やかして甘やかしてやっと甘えるような子。
基本、無理しすぎちゃうやつだから心配はしてたんだけど、今回は明らかにおかしい。
文乃とは大学の時に出会った。
初めての講義で適当に座った席の前にいたんだ。
地元宮城から出てきて知り合いがいない、1人だった俺に気付いて声をかけてくれて、それから友達としてつるむようになった。
…そこから恋に変わるまで、時間はかからなかった。
少しずつ友達が増えて、自分と同性のやつと大学生活送るようになって、何か違和感を感じるようになった。
なんか隣がすかすかする…みたいな。
だからよくバイトの給料日のすぐ後に飯食いに誘ったり、東京の地理がわからないって嘘ついて案内してもらったりした。
この違和感の正体が知りたくて宮城での友人に電話で聞いてみて打ちのめされた。
「スガ…俺もよくはわかんないけどさ…
それって、その…文乃さんに離れて行って欲しくないってことじゃないか?
ってことは、スガは…文乃さんのこと…好き…なんだと思うよ?」
おっさん面のひげちょこに気付かされるなんて癪だけど、言われてすとんと気持ちが定まった。
ああ、俺、文乃が好きなんだ…
気付いてからは猛アピール。
がんがん飯に誘って、一緒の講義は隣をキープしたり…
出会ってから1年。
初めて会った教室の近くに咲いていた桜の下で告白したらはにかみながらOKしてくれた。
それからずっと俺は文乃と一緒だった。
他の誰にも渡したくなくて、俺と文乃の就職が決まってすぐプロポーズして、籍を入れた。
就職したてだったから給料もまだまだ少なくて、結婚式も挙げられなかった。
けれど、文乃は笑って「お金が貯まったらね。」って言ってくれたけど、まだ実現できていない。