第4章 2人きりでのイケナイ遊戯
夕飯は京風の懐石料理。
秋の食材を使った素敵な料理を目の前にした灰羽くんがはしゃいだのを窘めたり、それを見た仲居さんがくすりと笑ったりとなんとも騒がしい夕飯を終えた。
部屋食プランにあったシャンパンも美味しかったし、もちろん趣向を凝らした料理もとても美味しかった。
少しだけテレビを見ながらゆっくりしていれば灰羽くんが少しだけソワソワし始めた。
「どうしたの、灰羽くん?」
「あの…こんなこと言っていいのかわかんないんですけど…」
どうしたんだろう…と首を傾げれば眉を八の字に下げ、へにゃりと笑う。
「なんだか物足りなくて…」
そう言いながらお腹に手を当てる灰羽くん。
さっき、夕飯食べたばかりでしょ…なんて突っ込む気力もなくなるわけで…
諦めて冷蔵庫へ向かうと、私は駅で買ったワッフルを出す。
箱を開ければ色とりどりのワッフル。
プレーン、チョコ、メープル、抹茶、あずき、イチゴバニラ、ミルクティー、キャラメルナッツ、プリン、レアチーズ。
私はその中からあずき、ミルクティー、キャラメルナッツ、レアチーズを貰い、それ以外は灰羽くんに渡す。
お腹いっぱいだからと自分の分は冷蔵庫へ仕舞い、部屋に戻ってみれば美味しそうに食べる灰羽くん。
それを見ていたらやっぱり食べたくなってしまい、ついつい灰羽くんをじっと見てしまう。
「物欲しそうな顔…してますね?」
ぼうっと見ていたから気づかなかった。
灰羽くんが私のことを見ていたことに。
「もう、いいですか?椎名さん。」
最後のワッフルを飲み込んだ灰羽くん。
指についたクリームを舌で取り、口に含む。
「…だめって言ったら?」
意地悪を言いたくなり笑いながらそういうと、灰羽くんは私の腰を抱く。
「言わせませんよ?そんなこと。」
くすり、笑った灰羽くんは、そのまま私の唇に口付けた。
彼の唇は甘い甘い、メープルの味がした。