第4章 2人きりでのイケナイ遊戯
「俺はっ!俺は…そんなに、都合のいい存在ですか…」
「言えば抱いてくれる…お手軽な存在…ですか…?」
苦しそうに吐き出す灰羽くん。
そう、思わせていたのか。
いつのまにか溢れた涙は頬を伝いポタリと床に落ちた。
泣くつもりなんてなかった。
それでも一度溢れた涙は止めることができなくて、必死で笑顔を作り、会議室から灰羽くんを追い出した。
ただ、忘れさせて欲しかった。
日常のしがらみを
貴方が好きで
でもそれは世間から見たらいけないことで
だから、
私達のことを知らない所で、少しだけ恋人のように振る舞いたかった。
でも、それも叶わない。
ポケットから取り出したスマホ。
孝支に嘘をついて、灰羽くんと行こうと思っていた温泉。
旅館を予約していたけれど…
キャンセルするのももったいないから1人で行こうか。
そう思い、旅館の情報をひと眺めするとスマホをポケットにしまう。
そして、流れ出た涙をティッシュでふき取ると私は第3会議室の鍵を開け、外へ出た。
オフィスに戻れば机の上にポストイットの貼られた小さなチョコ菓子。
メモには”すいませんでした”の文字。
無理を言っているのは私なのに。
灰羽くんの気持ちに収まっていたはずの涙がまた、溢れそうになった。
そして、あっという間に時は過ぎ、金曜日の就業のチャイムが鳴った。
荷物をまとめて帰ろうとした時、隣の席から、声がかかった。