第3章 夏
始業して30分。
朝食も終わり、やらなきゃいけない仕事はなかったかと確認をしていれば、灰羽くんが袋を抱えて帰ってきた。
「戻りましたー。」
…大きな袋を抱えて……
「それ、何食分?」
「えっと…これが朝飯、これが昼飯です!」
そう言ってデスクに置いた袋は、確実に2食分ずつあって、食べきれるのかと不安になる。
そんな不安など気にせずに灰羽くんはバーガー店の袋を開け、包みを開くと大きな口でぱくりとバーガーを頬張り始めた。
それは先ほど私が食べていたメープル味のマフィン生地のバーガーで…
「灰羽くん…それ…」
「ああ、さっき椎名さんが食べてたの見て食べたくなって!
俺これ好きなんですよねー!」
灰羽くんはバーガーを食べ終わると包み紙をぐしゃりと潰し、次のバーガーを袋から取り出した。
次も同じ味。
それを食べつくした灰羽くんは、セットのドリンクを取り出しぐいと飲んだ。
最後にハッシュポテトを2口で食べ終わらせるとぺろりと唇を舐め、私を見た。
ぎじり…
灰羽くんの椅子が軋む。
そのまま近づいた灰羽くんは、私が座る椅子の肘置きに手をつきじっと瞳を見る。
「腹ごしらえ終了っす。次は…」
灰羽くんの指が胸元に伸びる。
その指はオフショルダーの胸元のゴムを下へと下げて行く。
「こっちをいただきます。」
そう言って、灰羽くんは私の唇に口付けた。