第15章 離婚、する
side灰羽
俺が"それ"を知ったのは去年。
残暑の厳しい9月頭。
それから約半年経った今日。
外に出れば、街には桜が舞っている。
桜色の花びらが風に舞ってふわりふわりと飛ぶのを横目に見ながら俺は走った。
電車に乗って2駅。
改札を抜けて再びダッシュ。
ずっしりとした鞄の重み。
やっぱりリュック式のビジネスバッグにすればよかった。
そんなことを考えながら俺は必死に走った。
ーーーーーー
着いた先は病院。
受付をし案内された先に彼女はいた。
「あ、灰羽く…ちがった。リエーフくん。」
ベッドの上の彼女はふわり微笑む。
「えと…文乃さん。」
いつもよりぐったりした文乃は笑顔の中にきらりと光るものがある。
ほろり、それが落ちたことに気づき、俺は文乃さんを抱きしめた。
「文乃さん、ありがとう。」
「何、泣いてるのよ。」
指摘されて気づいたけれど、いつのまにか俺も泣いていたようだ。
格好良く抱きしめて涙を拭いてあげるつもりが俺が涙を拭かれている。
「文乃さんこそ。」
「私はいいじゃない?頑張ったんだもん。」
くすり、と笑う文乃さん。
すっぴんのその顔が可愛いくてそっと唇を奪おうとすると…
コンコンッ
ドアをノックする音がしてふと我に帰る。
ぐいと文乃さんに体を押されたと同時に入り口のドアが開いた。