第15章 離婚、する
side灰羽
文乃さんが菅原さんと別れて3年が経った。
2人は良い友人として付き合いはあるみたいだ。
まあ、同じ大学の同じ学科だから、友人も共通する人が多いんだろう。
職場の方もほとんど変わりはない。
まあ、後輩ができて、俺が指導する側に回ったってくらいかな。
今日も朝から仕事。
パソコンとにらめっこしながら企画書をまとめているんだけど…
「おい、リエーフ。さっきから一文字も進んでねえぞ。」
ぱこんっ
頭に刺激が加わって思わず振り向けば、顔をニヤつかせた黒尾さんがいた。
「…すんません……」
「そわそわする気持ちもわかるけどさ…
流石に会社に来た以上は給料出てるんだから仕事しろ。」
2度目のすいませんを言おうとした時だった。
デスクに置いたスマホが音を鳴らす。
「っ!もしもしっ!!」
黒尾さんに目配せしながら飛びつくと、思った通りの声。
この電話が来たら今日は早退するつもりだったので、電話をしながら手早く荷物をまとめた。
「わかりました。今から行きます。」
電話を切ると、俺は黒尾さんに向き直った。
「すいません。今日は早退でおねがいします。」
「了解。後のことは明日出勤してからな。」
「よろしくお願いします。」
荷物と春物のコートを持ち、ぺこりと頭を下げると、俺は職場を後にした。