第2章 罪悪感
「すいませんでしたっ!」
彼は泣きそうな声で私に謝った。
「俺…椎名さんが結婚してるって知らなくてっ!」
泣きそうな声…ううん、見えないけれどきっと泣いてる。
「旧姓で今の会社に入ったからそのまま仕事させてもらってるの。それに指輪もしてないし、話題にも出さないから社内で知ってる人も少ないの。」
だから、灰羽くんは悪くない。
「でも、俺…」
泣かないで
嘘をついたのは私。
ずるいのは、私。
貴方に抱かれたいから言わなかったの。
だから、謝らないで。
「でも、やっぱり諦められないんです。
椎名さんが好きなんです。」
「私のことを好きでも、絶対報われないよ。」
「それでも好きなんです。」
すきよ
本当はこのまま後ろを振り返って抱きしめてあげたい。
でもそんなことをしたらココロまで孝支を裏切ってしまう。
「私は絶対灰羽くんのこと、好きにならない。」
そう自分に嘘をつく。
だから、離して?
私を抱きしめる腕をぐいと押すけれど男性の力に抵抗できるほどの力は私にはない。
逆に抱きしめる力は強くなる。
「だめ…灰羽くん、離して。」
「離したら椎名さん、帰っちゃうでしょ。
だから離さない。」
「帰らないから…」
本当は帰りたい。
灰羽くんの香りに包まれておかしくなりそうだから…