第14章 単身赴任、残る。
ーAfter 3years
孝支が転勤になった。
場所は東京本社。
私は職場にそのことを伝え、ノマドワーカーから本社勤務に変更してもらった。
私達は3年暮らした仙台に別れを告げ、再び東京へと戻った。
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「ひっさびさだなー、東京。」
「物件探しにもきてるじゃない。何が久々よ。」
そう孝支に言えば、後ろから小さな声。
「ままー?」
後ろを振り返れば目を擦る小さな影。
「どうしたの?ゆずは。」
猫のような上がり目
色素の薄い瞳
少し癖のあるふわりとした髪
おしゃべりの上手な彼女は"彼"の面影がある。
「おなかしゅいた…」
彼女のその言葉に孝支はくすりと笑う。
「はいはい、もう少し待てるか?ゆずは。
すぐにお店探すからひとやすみするべー?」
「やったー!ひとやしゅみしゅるー!」
喜ぶ彼女をミラーで見ながら、私はナビを確認し近くの食事処を探す。
「後少しのところにファミリーレストランあるよ?」
「よし、じゃあハンバーグ食べるべ!」
「やったーはんばーぐー!」
流れて行く楽しそうな声。
それを聴きながら私は静かに窓の外を見た。