第14章 単身赴任、残る。
そして木曜日、久しぶりのオフィススタイルといつもよりしっかりしたメイクで家を出る。
出社時間より時間があるのに、孝支が駅まで送ってくれたのでオフィスのみんなにお土産を買い新幹線に乗り込んだ。
仙台駅から最寄りである大宮駅まで直通1時間と少し。
乗り換えてオフィスのある駅まで約30分。
久しぶりの東京。
人の多さに苦笑しながら、私は荷物を駅前に取ったビジネスホテルに預け会社へと向かった。
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「お、椎名久しぶり…って感じしねえな。」
「まあね、顔合わせてないけどずっと仕事はしてたしね。」
おはようございますとオフィスのドアをくぐると出迎えてくれたのは黒尾。
そのまま黒尾にお土産を渡していると、静かなオフィスに響くばたばたとした走る音。
「椎名さーーーん!!」
「灰羽くんうるさいっ!2年目なんだから少しは落ち着いたら?」
「だって椎名さんに会いたかったから…」
さっきまでの笑顔、そして私に怒られてシュンとした顔。
どちらも可愛くて私はくすりと笑った。
「ほら、お前らいちゃついてんなよ?
リエーフ、資料持ったか?会議室行くぞ。」
「あ、すいません!すぐ取ってきます!」
「俺先行ってるからな。」
そう言って黒尾は先に会議室に向かった。
私の今までの仕事を継いでくれている灰羽くん。
そのため私と密に連絡を取り合っている1人として一緒に会議に参加する予定だ。
仕事のスムーズさ、改善点。
ノマドワークを取り入れたばかりだから、質問攻めになるんだろうなと少しため息をつきながら先に会議室へと向かえば、後ろから私の名前を呼びながら灰羽くんが私に追いついた。
「元気にしてた?灰羽くん。」
「バッチリっす。あ、椎名さん。」
「今日の夜、いっぱいセックスしましょうね?」
囁かれた耳に熱が灯る。
吐息で揺れたピアスが音を鳴らす。
立ち止まり灰羽くんを見れば
彼は雄の瞳で
笑っていた。
それだけで私のお腹は
きゅんと疼いた。