第14章 単身赴任、残る。
そして5月中旬。
「孝支、ごめんね?」
「大丈夫。土曜日には帰ってくるんべ?待ってる。」
小さなスーツケースに洋服を詰めながら、私は孝支と話をしていた。
明日から私は孝支と離れ、1人東京へ赴く。
明日木曜日は出勤後、ノマドワーカー第1号としての聞き取り調査、午後からは出勤しないと行うことができない勤務が目白押しだ。
金曜日も勤務が盛りだくさん。
考えただけでハードワーク。
でも、楽しみでしかない。
「なあ、文乃?」
ふわり、後ろから孝支が私に抱きつく。
「なあに?孝支。」
「離れてる間、俺のこと少しでも思い出して欲しいから…
いい?」
ちうっと音を立ててうなじに触れた唇。
ぱたりとスーツケースを閉めると、私は孝支に向き合った。
「うん。いっぱいシてね?」
背中に手を回せば抱きかかえられ、寝室に移動すればそっとベッドに降ろされる。
余計な気持ちを溢れさせないように
私は心と唇を閉ざす。
そして降ってきた唇に答えるように
そして汚い現実から目を背けるように
私は瞳を閉じた。