第14章 単身赴任、残る。
ーーーーーー
季節はうつり、寒い寒い冬から暖かな春になる。
「「よろしくお願いします。」」
2人で見送ったのは引越しのトラック。
これから私たちも自宅だった場所の最後の確認、引き渡しをした後、自らの車に乗って引越し先の仙台に向かう。
東北自動車道で4時間半。
孝支と何度か行ったことのある東北に今度は住むことになるなんて。
「ほら、水道会社の人が来る前に部屋の掃除終わらせんべ?」
「そうだね。」
孝支の後を追い部屋へと戻る。
がらんどうな部屋。
残ったのは食器数点と生活雑貨、数日分の着替えと掃除用具。
向こうに行ってからすぐに必要になり、そして車に積んでいける量の荷物のみ。
車に荷物を積むと家電があった場所を掃き掃除、拭き掃除し、気になる場所を再度点検していれば鳴るチャイム。
水道会社の方の点検、そして家の管理会社の方との退去のチェックを行えばこの家ともお別れ。
名残惜しさを堪え車に乗り込むと車は首都高に向かって走り出した。
「孝支、私のわがままに付き合ってくれてありがとう。」
私がそう呟けば、運転席で孝支が笑う。
「いやー、文乃に提案された時はびっくりした。
まさか仙台に行っても今の会社を続けるって言われるなんて思わねーべ。」
「私も会社、やめなきゃならないなって思ってた。」
そう、話は黒尾と飲みに行った時の話に移り変わる。