第14章 単身赴任、残る。
「おい、椎名。」
低い、地を這うような声とともに掴まれる顎。
抵抗しようと顎を掴む手を振りほどこうとするけれど力は雲泥の差。
離して
そう言おうと開いた口に重なる唇。
と同時に、いつのまにか口にふくんでいたらしいお冷やが私の口に運ばれてきた。
アルコールで焼けた喉を冷やす水分。
それが口内からなくなっても黒尾の唇は、舌は離れなかった。
「くろ…」
「鉄朗だ、馬鹿。」
酔った勢いと勘違いをし、抵抗どころか舌を絡める私。
それに勢いづいた黒尾もスーツの上から体を撫でる。
背中に手を回し体を密着させ、そっと唇を離す。
つ、と2人を繋ぐ銀糸がふつり、と切れた。
「どっちも諦めなくていい方法、あるぜ。」
唐突な黒尾の返答。
どういうことかと思いながら問えば、黒尾は衣服を整えながら店員を呼んだ。
届いたのは"カミカゼ"
ウオッカベースの度数高めのカクテル。
それを黒尾は一気に煽り、私に再びキスをする。
「さあ、大人な話をしようぜ?椎名?」