第13章 会社を辞め、ついて行く。
それからはまるで早送りのよう。
カラオケの支払いをし外へ出ると、ふたり手をつないで走った。
カンで走った路地に目的のネオン。
その中の一つに私達は足を踏み入れた。
部屋を選ぶ時間も
鍵を受け取る時間も
エレベーターを待つ時間も
全てがもどかしかった。
繋がる手がやけに熱を持っていた。
点滅する部屋番号。
ドアを開け中に入る。
ぱたん
ドアが閉まると同時。
私は振り返り、彼のネクタイをぐいと引くと唇に噛み付いた。
息継ぎもできないようなキス。
そんなキスをしながらも頭は冷静で、私は彼のネクタイを外す。
彼も考えていることは同じで、キスをしながら私のジャケットを脱がせ、タイトスカートのホックを外す。
もう何も考えられない。
…考えたくない。
私のワイシャツの最後のボタンが外れたとき、彼…灰羽くんは私から唇を離した。
絡めた舌から銀糸が伝い、切れる。
「最後に…愛しても、いいですか。」
後戻りなどできない状態で、灰羽くんはそう言った。
2つのエメラルドは、雫に濡れていた。
「最後に、沢山抱いて。」
私は背伸びをして
その雫に唇を落とした。