第13章 会社を辞め、ついて行く。
「いえーい!盛り上がってるかー‼︎」
同期の盛り上げ役、木兎がマイクを持ち笑う。
カラオケ店の広い一室を盛り上げるように鳴る音楽。
それは今人気のJポップだったりアイドルソングだったり。
様々な曲が次々部屋を埋め尽くす。
そんな中私は飲み放題のレモンサワーをちびちび飲みながらかかった音楽に耳を傾けつつ話しかけてきた仕事仲間と話をしていた。
ふいにかかった今人気のグループの音楽。
聞き覚えはあるけれど、ちゃんと聞いたことのない。
そんな曲なのに、耳に歌詞が入ってきたのは
それを歌っていたのが
灰羽くん、だったから。
世界で一番大切な人が
いなくなっても日常は続いていく
あなたを思い出せなくなるその日まで
僕は何をして何を見て
息をすればいいんだろう
前を見れば、やっぱり灰羽くんは私の方を向いていて
翠玉の瞳から
目をそらせない
歌い終わった彼が席に戻る。
わざとらしく携帯を取り出し画面を見ると隣の友人に声をかけた。
「潔子、ごめん。私、用ができちゃって…
先に出るね。」
彼女とはまた会う約束をし、部屋の外に出た。
部屋から会計カウンターに向かう。
他の部屋の音楽がぼんやり聞こえる。
自分のヒールの音がこつり、響く。
「椎名さんっ!」
後ろから抱きしめられた身体。
私は抵抗もせずに抱かれている。
「好きです。貴方が好きです。」
駄目だって頭ではわかっているのに
ココロが
止まらない。
「行こっか、ホテル。」