• テキストサイズ

秘密のあいらぶ・ゆー【HQ】

第13章 会社を辞め、ついて行く。




「だからメッセージアプリ送っても仕事の時もあんな態度だったんですね?」


寂しそうなグリーンが私の瞳を見る。
肩に乗った手はわずかに震えている。


だからよ。
だから聞かせたくなかったのよ。

きっと君は思うわ。
”自分のせいで私は会社を辞めることになった”
”自分のせいで私は知り合いのいない土地へと行くのだ”と。


でもね、
仕事を辞める決意をしたのは私。
孝支について行く選択肢をしたのも私。


そして
貴方への気持ちを捨てる、という選択をしたのも


わたし

「そうよ。
私は貴方じゃなくて旦那を選んだ。
ただ、それだけよ。」

「俺のこと好きだって…言ってくれたじゃないですか…」


好きよ

すき

貴方が好き


「やめて。誰に聞かれているかわからないんだから。」

掴まれた肩に力が伝わる。

「俺は椎名さんが好きです。」

「だからやめて。」

「好きです。」

「やめてって言ってるでしょう。」

「貴女が、好きです。」





「やめてっ‼︎」

叫んだ声がバルに反響し、みんながこちらを見る。
私の叫び声を聞きつけて黒尾がこちらに来るのが見え、ふいと顔を背けた。


「お前ら何してんだ。」

訝しげな声で問う黒尾になんて言い訳しようか悩んだけれどそれは杞憂に終わる。

「ああ、すいません。椎名さんが最後だからってちょっとやらかしちゃって…」

赤葦くんが降参のポーズを取りながらすらすらと嘘をついたから、私はそのまま身を委ねた。

「肩のところにおもちゃの蛇を置いたんです。
会場が薄暗いので本物と見間違っちゃったらしくて…」

「お…俺…こんなにっ、驚くなんて…」

灰羽くんもなんとか嘘を読み取ってしどろもどろだけど言い訳をする。

「お前らはふざけすぎだ。仮にも女にそれは駄目だろう。」

フォローに回ってるつもりかもしれないけれど、一言多いわよ…

「黒尾、”仮にも”じゃなくてちゃんと女なんですけど…」

「ああ悪い。さっきの叫び声が男らしかったからつい。」

ニヤリ
わざとらしく笑いながらそう私に告げる黒尾。
私はお返しとばかりにその大きな背中にばちんと音が聞こえるくらい強く平手を入れてやった。

そして私はそのままその場を離れた。
寂しげな視線に気づかないふりをして。

/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp