• テキストサイズ

秘密のあいらぶ・ゆー【HQ】

第12章 静かな波が、跳ねる。




ピー、ピーという電子音が聞こえ、ふ、と起きれば窓からは冬独特の和らげな光が差し込んでいる。

あの音は加湿器つきの空気清浄機の給水を知らせる音だろう。
水を足さなきゃ。
そう思い起き上がろうとするけれど、すぐに布団へ逆戻り。

孝支が私の服を掴んでいて起き上がれない。

「孝支…?孝支?」

名前を呼ぶと、孝支は眉間にしわを寄せ小さく呻く。
そして、泣いて腫れぼったくなってしまった瞼を重そうに開けた。

「ん…文乃?」

「おはよ、加湿器のお水、切れちゃったみたい。」

そう言って孝支の手を離そうとしたけれど、孝支は離してくれない。

「んあー、目ぇ痛ぇーなー!文乃も腫れてる。」

そっと手を伸ばされ指がまぶたに触れる。
その指が優しげで、私はまた涙をこぼした。

「泣ぁーくなって。」

伝った涙を孝支の指がつ、となぞる。
そっと目を開けば孝支の瞳からも雫が伝っていた。

「孝支こそ…泣かないで?」

私に泣いているのを気づかれた孝支は、ふいっと顔をそらして自分の袖でガシガシと目元を拭き、私ににかりと笑う。

「ほら、泣いてねーべ?」

「ん、そだね。」

孝支の笑顔を見て安心したのか、私の口元も緩み、なぜかお腹まで緩んでしまったらしい。


ぐぅぅぅうううっ!


私のお腹の虫も鳴き始め、止まらない状態になってしまった。

「えっと!これはそうっ!忘年会終わってから全然食べてなくてっ!」

言い訳するように早口でまくし立てれば、孝支はプッと吹き出し大爆笑。

「わかった!じゃあ飯にすんべ?
今日は俺特製オムライスでどうだべ?」

孝支がよく作るふわとろオムライスを思い出し、口で返事をする前に勢いよくお腹が鳴る。

「元気な腹だなー!じゃあ文乃はシャワー浴びてこいな?化粧落としてないべ?」

勢いよくベッドから降りた孝支はそのまま寝室から出て行く。
寂しそうな後ろ姿に声をかけようとすると、一度部屋から出ていった孝支がまた顔を出した。

「あとさ…あとで話したいこと…あるんだけど。」



「……うん。」


他に何か言わなきゃなとは思ったけれど、何も出てこず、私は着替えを持つとそのままバスルームへと向かった。


/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp