第12章 静かな波が、跳ねる。
「なあ、文乃。それは何に対しての”ごめんなさい”?」
その言葉にす、と頭が冷えた。
私は何に謝っているのだろう。
灰羽くんと、赤葦くんとホテルに行ったこと?
孝支に嘘をついて帰宅を遅らせたこと?
いや、
違う。
「灰羽くんをすきになってしまって…ごめんなさい。」
そうだ。
私は1番に孝支を愛していなければいけない。
でも、いま1番に心にいるのは灰羽くん。
だから、謝ってるんだ。
「孝支を1番に愛せなくて…ごめんなさい。」
涙が次々溢れ出して止まらない。
堰を切ったように溢れ出る涙を2人で流しながら、
私たちはいつのまにか寝てしまっていた。