第12章 静かな波が、跳ねる。
side菅原
やっと捕まえたはずなのに
文乃は俺の手からすり抜けて行く
堪えていた涙が溢れていく
「なんで俺から離れて行くんだよ。」
隠した本音が溢れる
好きで
好きで
すきで
文乃じゃないと駄目なんだ。
俺から離れて行くんだったら…
「…ーし、こーし…」
ふ、と名前を呼ばれたことに気づく。
いつのまにか瞑っていた目を開ければ、目の前の文乃も涙を流していた。
「っ…めんな…さ」
「ごめんな…さい」
壊れた玩具の様に何度も繰り返すごめんなさい。
違うんだ。
俺はそんな言葉が聞きたいわけじゃないんだ。
「やめるべ。」
「ごめんなさい…孝支」
「なあ、文乃。それは何に対しての”ごめんなさい”?」