第11章 視感。
「赤葦くん…」
「なんですか椎名さん?」
「タオル…」
「いりませんよね?」
さっきからこの会話を何回しただろう。
明るい浴室の中、私たちはタオルも巻かずにお風呂に入っている。
そう、赤葦くんの条件とは”一緒にお風呂に入ること”だった。
ちなみに灰羽くんはまだ寝ている。
そのため、私は完全に赤葦くんに独占されていた。
「本当、いい身体してますよね。」
「そんなに見ないで…」
舐めるように全身を見られ、恥ずかしさに腿をすり合わせ手で胸を隠す。
「灰羽も見てないし…少し触ってもバレないですよね。」
ぱしゃり。
赤葦くんが動きお湯が揺れる。
浴槽に座った私に覆いかぶさるように身体を移動させた赤葦くんは私の頬をそっと撫でる。
逃げることもできずにいると赤葦くんの長い指が私の頬を滑る。
そのまま首筋を通り、胸の谷間、お腹…と身体をなでられ、足と足の間…つまり陰部を隠すように生えた茂みを撫でていた。
「椎名さん?」
「っ……なに?」
「さっきよりももっと恥ずかしくて感じること、しません?」
…どういうこと?
不思議と不安が入り混じった気持ちで赤葦くんを見れば、私を見ながら赤葦くんは嗤う。
「ココ、もっと綺麗にしません?」
そう行って撫でたのは陰部の茂み。
もともと薄いからとあまり気にしていなかった茂みを、赤葦くんは無くしてしまおうというのだ。
まあ、簡単に言えば私のアンダーヘアを剃りたいらしい。
「流石に旦那にバレるわよ。」
そう突っぱねれば、やわりと触れていた指先に力が入る。
「バレるかバレないかのギリギリのラインが楽しいんじゃないんですか。それに、全て無くして際どい部分まで全部見せてしまうのって、ものすごく恥ずかしくて…ものすごく感じるんじゃないんですか?」
たしかに…
さっきもそうだった。
灰羽くんの膝の上に乗せられているという体勢のせいかもしれないけれど、それ以上に”普段見せることのない場所を視られている”ということに明らかに興奮している自分がいた。
確かに灰羽くんと旅行に行った時も、見られるかもという状況に少なからず興奮していた。
「どうします?」
悪魔の囁き。
でも抗えないのはきっと、私がこの状況を楽しんでいるから。
「…わかった。」
そう言えば、赤葦くんの口の端が卑猥に歪んだ。