第11章 視感。
朝…といっても寝たのはほんの数時間前。
どこからか聞こえてくる洋楽の音で目が覚める。
音源を確かめれば、それは赤葦くんの枕元にあった。
近くにあるシーツを体に巻きつけ音に近づき、申し訳ないと思いながらも私は音を消すため赤葦くんの枕元にあるスマホを手に取った。
「………えっち。」
え…?
聞こえてきた声のほうに目線を送ると、閉じられていると思った瞼が開いている。
「人の携帯、勝手に操作しちゃダメですよ?」
赤葦くんはくすりと笑うと私の手からスマホをとりかえし、男性ボーカルの声を消した。
「携帯勝手に弄ってごめんなさい。」
「さっきのは冗談です。アラーム解除しようとしたのはわかってますから。」
スプリングの音を鳴らしながらソファから起き上がり、自分の横を叩く赤葦くん。
座れ…とのことなのか。
とりあえず横に座れば、赤葦くんが私に話しかける。
「どうでした?」
何が…なんて言われなくてもわかる。
昨日の行為を思い出し、顔が朱に染まる。
「まあ…ね…?」
言わなくても、昨日の乱れ具合を見ていればわかるでしょ?
そんな雰囲気を醸し出しながら返答するけれど、そんな私の顔を赤葦くんはぐいと自分の方に向ける。
「ちゃんと言葉にしないとわからないですよ?
どうだったんですか?俺に見られながら灰羽とセックスするのは。」
「そんなにストレートに言わないでよ…
……気持ち…よかった…」
恥ずかしさで目を逸らそうとするけれど、赤葦くんはそれをさせてくれない。
にやり、笑いながら私の瞳を捕らえて離さない。
「そうですよね。
素敵でしたよ。身体全てを感じさせて喘ぐ椎名さんが。
……もっと言ってもいいのなら具体的に話しますが…」
「やめて…」
恥ずかしさでどうにかなってしまいそう。
早くシャワーを浴びて服を着てしまいたい。
そう思うくらい、身体は徐々に熱を帯び始めていた。
「やめてあげます。
でも1つだけ条件が。」
恥ずかしさで私は条件を聞かずにそのまま首を縦に振った。
でも、その条件を飲むことの方が何倍も何十倍も恥ずかしいなんて、
恥ずかしさから逃げようとしている私にはまだわからなかった。