第10章 変化。
身なりを整えホテルを出た私と赤葦くん。
ホテルに入る前よりはまばらになった人。
それでもやっぱり人は多く、大半は顔を赤くさせ、アルコールの混じった吐息を漏らしている。
改札を抜けようとICカードを鞄から取り出していると不意に引かれる体。
「たまには俺とも、遊んでくださいね。」
そう言ってまとめ損ねた一房の髪の毛をそっと掴み、赤葦くんは唇を寄せた。
「もう…キミとはこれきりよ。」
そう言った刹那、私の名前を呼ぶ1つの声。
「椎名…さん。」
後ろを振り向けば、他の人の頭一つ突き抜けたプラチナ。
困惑したエメラルドが揺れる。
そう、2次会、もしくは3次会から抜けてきたらしい灰羽くんとバッティング。
1番見られてはいけない場面を、見られてしまったみたいだ。
「はいば…くん。」
「なんで…赤葦さんと…」
「違…」
どうしよう
パニックになる頭。
どんどん近づくエメラルド。
気づいた時には私は誰かに手を引かれ、来たはずのホテル街の方へと走り出していた。