第10章 変化。
強引に組み敷かれていたはずだった。
ぱっと胸にかかる手が外れ、ふわり、掛け布団が素肌に触れた。
目を開ければ緩めたネクタイを結び直す赤葦くん。
「……え?」
「無理強いはしませんよ。」
さすがに泣かれるとは思ってませんでしたが。
そう言い、謝る赤葦くんは備え付けられたティッシュペーパーを1枚渡してくる。
「灰羽に無理やり…とかじゃないのはわかりましたし。」
意味がわからなくて体を起こしてぼうっとしていると、赤葦くんはベッドから離れどこかへ歩いていく。
と、冷蔵庫を開け清涼飲料水を2本取り出しベッドに戻ってきた。
「どうぞ。」
「ありがと…」
もらったペットボトルを開けようとするけれど、なかなか蓋が回らない。
何度も何度も挑戦していると、横からペットボトルを奪い取られ、赤葦くんが蓋を開ける。
「怖い思い、させましたね。」
かたかたと震える手。
それに気づいてしまったら、私は涙を止めることはできなかった。
両手で顔を覆い、嗚咽をこぼす。
止まらない涙。
そっと背中をさする赤葦くんの少しだけ冷えた手に
灰羽くんを重ねてしまい、
余計に涙が止まらなくなった。