第10章 変化。
頭からシャワーの水を浴び、ひたすら無心になる。
大丈夫、大丈夫と呪文のように自分に言い聞かせる。
身体を洗いタオルだけを巻いて外に出ると、赤葦くんはベッドの端に座っていた。
「お待たせ、しました。」
やけに丁寧な言葉。
緊張してるのが丸わかり。
それでも前へ進むと、赤葦くんが私に手を伸ばして来たので自分も重ねる。
急に動き出す景色。
背中でぎぢりと鳴るマットレス。
いつのまにか私の体はベッドに投げ出されていた。
その上に覆い被さる赤葦くん。
しゅるり、ネクタイが緩んだ音。
赤葦くんが唇を舐める仕草。
全てが早回しのように進み、追いつかない理性。
「赤葦くんまって…」
「待てません。」
剥がれるバスタオル。
わし掴まれる胸。
押した肩は全く動かなくて、ワイシャツの上を滑っただけだった。
抵抗など無意味。
そう言われているような感覚。
苦しくて、
怖くて、
一粒、涙がこぼれた。