第10章 変化。
他の人に紛れるように、私達は裏路地に入り込んだ。
裏路地の中でも白黒のシックな建物に進む赤葦くん。
一瞬身構えた私の腰を抱きながら、赤葦くんはその建物に入っていく。
1番シンプルな部屋を選択し、受付に向かう赤葦くんの後を追えば、さっさと部屋代を支払い鍵を受け取っている。
「私、払う…」
「今回は俺が無理やり誘っているのでこれくらいは。」
スマートな返し。
これがデートの食事の場だったら完璧だ。
なんて考えていたら、先に進みエレベーターを捕まえたらしい赤葦くんが私の名前を呼んだので、急いで赤葦くんのいるエレベーターに乗った。
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部屋はモノクロ、落ち着いた雰囲気の部屋だった。
「シャワー浴びますか?」
私は何も答えられず下を向く。
するりと伸び、頬に触れた手。
外気にさらされてひやり、冷えた手に驚き顔をあげれば、上着を脱いだ赤葦くんがいた。
なぜ、私はここにいるんだろう。
どうして目の前にいるのは赤葦くんなんだろう。
頭の中を巡るのはそればかり。
「椎名さん。」
そう呼ばれ、なんだかいたたまれなくなった私は見つめていたはずの赤葦くんの瞳から視線をずらし、赤葦くんから離れる。
「お風呂…使わせてもらうね。」
そう言って、私は逃げた。