第10章 変化。
飲み会が終わり、それぞれ仲の良いメンバー達と2次会へはけていく中、私は赤葦くんに待ち合わせに指定された駅前まで歩いていた。
孝支には2次会に出ると連絡。
帰りに連絡するとも。
酒に酔い、駅へ向かう人の波。
その波をかき分け、駅の反対口の改札前に向かえば壁に寄りかかり、スマホを覗く赤葦くん。
近寄り、声をかければ顔を上げ私の腕を掴む。
「逃げなかったんですね。」
「逃げても良かったの…?」
「まさか。」
そう言って見せて来たスマホ。
その画面の中には、いつだったか資料室で灰羽くんと行った行為が映し出されていた。
それも完全に2人、繋がった姿。
乱されたシフォンシャツからは胸が溢れ、たくし上げられたスカートからはなだらかな双丘が見え隠れしていた。
「会社内では声は抑えるように指導した方がいいですよ?」
まあ、椎名さんもですが。
唇に人差し指を当てくすりと笑う赤葦くん。
そう言われる前から逃げ場はないのはわかっていた。
しかし完全に退路を塞がれてしまうと、苦笑しか浮かんでこない。
「いつ撮ったの?」
「今月の頭くらいですかね。申し訳ないですがムービーも。
夜のオカズに使わせてもらってます。」
「…えっち。」
本当なのか冗談なのかわからない口調につい呟くと、赤葦くんはエスコートするように私の腰に手を回す。
「じゃあ、行きましょうか。」
腰に回された手はぐっと赤葦くんの方に寄せられ、
”逃げ出さないでください”
そう、告げているようだった。