第10章 変化。
クリスマスが過ぎ、会社も業務終了。
締めの本日、私の会社では就業後に忘年会が行われた。
長期の休みに入る嬉しさからか、みんなが浮かれていた。
借り切った飲み屋はお祭り騒ぎ。
そこまで騒ぐのが好きじゃない私は端の席に座り、ちびちびとビールを飲んでいた。
「お疲れ様です。」
そう声をかけてきたのは同じ部署、一年後輩の赤葦くん。
返事を返しながら近くにある座布団を彼に渡すと、赤葦くんは会釈をして隣に座る。
「すごいっすね、皆さん。」
「年末年始終わったらまた仕事なのにね。」
そう苦笑すれば、ですね、と赤葦くんが笑う。
そんな会話をしていれば、ぶぶっと振動する私のスマホ。
謝りながら画面を確認すればそれは孝支からで…
「旦那さん…ですか?」
言い当てられてどきりとなる心臓。
赤葦くんを見れば私をじっと見ていた。
「…よく、分かったね。」
そう聞けば、赤葦くんは私にとって衝撃的な一言を発した。
「なんか嫌そうな顔してたんで…」
うそ…
そんなに顔に出てた…?
びっくり…というよりショックだった。
孝支からのメールを嫌だと思う日が来てしまうなんて…
落ち込む私に赤葦くんはさらなる打撃を与える。
赤葦くんはざわついた店の中で声を潜めながら私の耳元で囁いた。
「だから灰羽に逃げてるんですか?」
息が止まった。
なぜ。
その言葉が頭を駆け巡る。
「なんの…こと?」
赤葦くんの顔を見れば口元を歪ませ、にやり、笑った。