第4章 恋知りの謳【謙信】
美蘭の手の温もりで目覚めた瞬間
俺を心配そうに見下ろす美蘭の姿が目に入った。
その姿は
あまりに美しくて。
信玄の受け売りのようでシャクだが
まさに天女に見えた。
その美しさはあまりに儚くて…
この世のものであるのか心配になり
心の臓の音を確かめずにはいられなかった。
抱き締めた体温はあたたかくて
耳に聞こえる確かな鼓動は愛しくて
艶やかな髪と甘い香りは身体の芯を疼かせた。
美蘭が離れていこうとした瞬間、
何か大切な物が腕の中からすり抜けていきそうな気がして
「ならぬ。」
引き止めた。
目が合えば、
真っ赤な顔で求めるような熱い眼差し。
視線が絡み合うだけで、
身体中が熱を帯びて、疼いた。
抵抗しようとし始めた紅い唇に
俺は噛み付くように口付けて、言葉を奪った。
「…ん…チュ…チュ…ちゅく…ん…っ」
唇を、つまむように軽く何回も口付けた後、
愛らしい鼻から抜けるような甘い声を聞きながら、舌で唇を割ってより深く繋がり合う。
徐々に、
ぎこちなくであるが、自ら舌を絡ませ始めた美蘭に、背筋がゾクゾクと栗立つ。
堪らない幸福感と
もっと深く繋がりたい新たな欲求で、体温が上昇する。
1度口付けを止め自分の下に横たわる美蘭を眺めると、
口付けだけで蕩けた様子で、クタリと横たわっている。
その目の前の女が、
美蘭が、
堪らなく欲しくて夜着の腰帯に手をかけると、
美蘭の身体はピクリと揺れた。
(……もう止まれぬぞ。)
言ったところで止まれぬのだから、言葉にはしない。
熱く絡み合う視線を逸らさない美蘭に同意の意思を感じ取り、密かに安堵して、シュルリと腰帯を解いた。
「……っ…。」
いちいち反応する美蘭に、自分も余裕がなくなる。
腰帯から解放された夜着の合わせにゆっくりと手を差し込んで、そのまま身体の線をなぞるように這わせながら夜着を肩から外して行く。
目の前に現れた紅潮した白い肌。
着物に隠されていた思ったよりもたわわな乳房。
羞恥に耐えるように目を閉じる美蘭。
その全てを手に入れたいと身体の中心に熱が灯った。