第17章 恋知りの謌【謙信】湯治編 〜恋心④〜
ほんの一瞬だが、
心の衝撃に身動きが出来なくなった秀吉。
その間に、
兎の後を追って駆け出した美蘭。
美蘭の駆け出したその方向には…
「…!!!美蘭!そっちは…っ…」
草むらに隠れて気付きにくいが、その向こう側はかなり急な斜面になっていることを知っている秀吉は、
ハッ!とそれを思い出し、
砂利道を美蘭に向かって駆け出した。
「兎さん、おいで?」
道の端の草むらに入って行きそうな兎にやっと追いついた美蘭は、兎を抱き上げてしまおうと、前のめりになって手を出した。
……その瞬間
「きゃあ…っ…?!!!」
草むらの中に踏み入れ過ぎた足はズルと滑り空を泳ぎ、なんとか兎を抱き上げたものの、兎諸共、身体がぐらりと傾いた。
「美蘭…っ!!!」
秀吉は必死に追いつくと、兎を抱き締めている美蘭をギュッ!と抱き締めた。
しかし
兎を抱き締めているが故に、既にかなり斜面に飛び出してしまい、おかしな勢いのついてしまっている美蘭の身体と、それらに掛かっている下に向かう重力が合わさった力は
鍛え抜かれた秀吉でも引き戻すことが出来なかった。
「っ…きゃあ…あっ…!!!」
助けるつもりが、
間に合わなかったとわかった瞬間、
秀吉は、
美蘭の身体をギュウッ!っと抱き締めた。
「…く…っ…!大丈夫だ…っ…俺に捕まってろ!!」
とにかく
美蘭を怖がらせない様にという気持ちと、
絶対に
自分が美蘭を守るんだという思いを込めて、
秀吉が美蘭に、そう声をかけた
直後
2人の身体は、
急な斜面を、
ガラガラと転がり落ちて行った。
続