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【イケメン戦国】恋花謳〜コイハナウタ〜

第5章 囚われの謌【光秀】共通ルート


立派な調度品に飾られた上等な個室に通された2人。

畳敷きの部屋であるが中央には囲炉裏があり、光秀が食べたいと言っていた猪鍋がグツグツと煮たっている。

光秀と美蘭は、囲炉裏を挟んで、向かい合って座っていた。


部屋を満たす美味しそうな香り。


「さ、食べ頃でございますよ。」

料亭の女将が器に取り分けようと手を伸ばしたその時。

「今日はもう下がってくれていい。取り分け役を連れて来たからな。」

光秀はそう言って、

女将が手にしようとしていた目の前にある取り分け用の器を美蘭の目の前に突き出した。


「…取り分け…役?」

自分を自分で指差しながら、首を傾げ、光秀を見上げる美蘭。


女将は、何かを察したように、

「かしこまりました。ごゆるりとお楽しみ下さいませ。」

そう言って、そそくさと部屋を後にした。


「早くこっちに来い。」

襖が閉まり女将が去ると、

光秀が、突き出していた器を手元に収め、自分の隣の座布団をポンと叩きながら言った。

「…え?」

「取り分け役だと言ったろう。」

「それなら此処に座っていても…」

「俺の手足になろうとするなら、俺と同じ視界になれ。」

「はあ…。」

あまりの自信満々さに押されて、なんとなく言われた通りに光秀の隣に移動させられてしまう美蘭。


(光秀さん…手足だなんて大袈裟なんだから。取り分けてあげるだけなのに。)

そして、言い返せない不満をこっそり呟きながら熱々の鍋をつついた。

野菜、肉、出汁をバランスよく器に盛った美蘭。

「…どうぞ。」

しずしずと、器を光秀に差し出した。



だが、

差し出された器に全く反応しない光秀。

「…?」




次に発せられた一言に、

「口に運べ。」

美蘭は間抜けな声を上げた。

「…へ?」



「食べさせろと言っている。長旅で疲れた。盃しか持てん。箸や料理など到底無理だ。敬え。」

「…わたしが?光秀さんに??!!!」

美蘭は顔を真っ赤にして慌てふためいた。

「他に誰がいる。」

「そんなの…っ…」

「金平糖…俺が貰っていいのか?」

ギロリと尖った視線を向けられ

「…!」

美蘭は、

蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなった。


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