第5章 -わがままデート-(二口堅治)
「はぁ…はぁ…すみれ…」
覆いかぶさるように優しく抱き締めて、最後に甘いキスをくれる…いつもの堅治のやり方…
わたしも惚けて力が入らないのだけど、少しでも堅治と近づきたくて、力を振り絞り、ギュッと堅治の背中に手を回す。
「すんげぇ…気持ちよかった…」
「うん…わたしも…」
それを合図に、堅治も力を抜いて、ベッドに座り、手早く事後処理を済ませているので、わたしは堅治に背を向けて、まだ力の入らない体に酸素を回すように、息を整えていた。
「すみれ〜」
事後処理を終えたらしい堅治が、甘えながら汗ばむ背中に抱きついてくる。普通なら、甘えてきて可愛いなぁーなんて、これからもう少し甘い時間が続くのだろうけど、わたしにはイヤな予感しかしない…。
「なぁに?暑いってばーー」
「うんー。オレも暑ーい。すみれ、風呂入れてーー?」
やっぱり…。
「またー?堅治んちなんだから、たまには堅治が入れてよ?」
「えー?なんでだよーう。オレはすみれが入れた風呂に入りたいのー!」
「そんなの知らない!じゃあ、わたしだって、たまには、堅治が入れたお風呂に入りたいよ?」
「風呂なんか誰が入れても同じだろー?すみれ、入れろよー?」
バレーしてる時はカッコいいし、普段は口が悪いし、ぶっきらぼうなトコあるけど、なぜだか、二人になると、よくわからない甘え方をしてくる堅治…。
付き合い始めの頃は、わたしにしか見せないのかな…とか、どちらかというと、わたしも世話焼きな方だし、ちょっと可愛いとか思ってたけど、最近は、なかなか一緒にいられないせいもあって、ただHしたいだけなのかな…って思ってしまう。
「もう…」
でも、あまり拗ねすぎたら、嫌われてしまうかも…そう思うと、だいたいわたしが折れてしまう。こんなコトくらいで情けないけど…。
近くにあった堅治のTシャツを着て、ベッドから抜け出す。
「さーっすがすみれ〜♪ありがとなー。」
「はいはい…」
ため息をつきながら、お風呂場へ行こうとすると、ちょうどわたしのスマホが鳴った。
誰だろ…
スマホを見ると、及川さんからだった。
「もしもし?」
『すみれー?遅くにごめんね、今大丈夫?』