第1章 中間淳太
関西に来てからなんだか変だ。
私の働く会社は大手企業で、
日本にいくつもの支社がある。
その本社は関西にあって
「〜、資料出来とる?」
秘書に頼めば早いものを、
仕事が山積みの私に急かすあたり、
この社長はドSだ。
ドSというより、もはやイジメに近いと思う。
「ちゃん、お気に入りやね」
ふふ、と隣のデスクで笑う神山くん。
ここに来て仕事の手順や色々と
細かく教えて貰った同期の人
新人研修で初めてお会いして以来だった。
『職権乱用だよ、あんなの』
「"社長命令やで"、やろ?
あの人の口癖みたいなもんやんかぁ」
「!!聞こえてんのか!」
『いま持って行きます!
なんなの、あのひと…。
私より桐山さんに頼めばいいのに…』
「はは、あのひと社長に忠実やからな」
気合いやで〜、と
ひらひら手を振り彼も仕事に取り掛かる。
社長室に行くのが憂鬱なんてのは、
この会社では私だけなんだろうなぁ…
目をつけられたのだって、
桐山さんに資料持ってって!と
仕事を押し付けられ、
そしたら会議時間が早まり、
「遅いわぼけえ!遅刻するっちゅーねん!」
と何故か私が怒鳴られてからで。
遅れたのは桐山さんが
すっかり忘れていたからなのに。
すっごい理不尽な気がする。