第6章 藤井流星
初めて見たのは2年になってすぐ、
同じクラス隣の席になったから
彼は眠そうな目を私に向け、
「ちゃん、やんな?よろしく」
そう、ふんわり微笑んで
そのまま机に突っ伏して眠った。
それから1時間、
濵田くんと小瀧くんから
起こされるまで起きなかった。
凄い寝付き…
先生の言うことは2割しか聞かないのに、
濵田くんと小瀧くんの
言うことは100%聞く藤井くん。
「なあ、濵ちゃあん」
「どうした流星」
「あいつらうるさいからどっかやって」
「お前のやん、自分でしいや」
「ええ、俺ああいうの無理」
「流星が呼び出しに行かんからやろ」
「めんどうやもん」
眠い、寝る。起こして。
この3つの単語だけで
濵田くんは、
眠いから始まる頃に起こしてな
って理解したらしい
私には分からない
「流星とのんすけとは幼馴染み
昔っからこうやから慣れてんねん」
『そうなんだ、昔から…』
「普段はずっと起きて喋ってんで?
ただクラス変わったから疲れやすいねん」
『知らない人ばかりだもんね』
「そうやねん〜。それに比べてあいつは…」
濵田くんが見た先には、
男女みんなに囲まれ
楽しそうにする小瀧くんの姿。
「あいつだけはどこに行っても
やっていける力があると思うわあ…」
うんうん、と
何度も頷く濵田くん。
「濵ちゃん濵ちゃんっ」
小瀧くんは濵田くんの犬かな?
なんて、
初対面の私は思った。
「構って構って〜」
「他の人と話しとったんちゃうの」
「飽きた!」
「おまっ、飽きたって…」