第3章 桐山照史
いつも人がたくさんいるのに、
1人が好きなんて信じられなかった。
「1人が好きな者同士仲良くしよや」
そう言ってまた嬉しそうにパンをかじった。
何が目的なんだろう、
私と仲良くなんて意味無いだろうに…
「友達にさ、八方美人って言われてた」
いきなり切り出したその話題は、
彼の心の悩みが含まれてた
「…影でコソコソタチ悪いよなあ。
俺にちゃんと言えばええやんって思った
でも、顔が怖いんやって。怒ると怖いらしい」
最低よなあ、って
傷ついてるはずなのに笑って誤魔化す
それでも誤魔化しきれないと
俯いてため息をつく。
「ほんまの友達ってさ、分からんよな
信じてても裏切られるし。」
「…そう、ですね」
「俺、よく強いとか言われんねん
でもほんまの俺はそんなんやなくて…っ」
堪えきれずに彼は涙を流した。
溜め込んだ分、
彼は嗚咽をもらして泣いた。
彼でも泣くのだと思い知ると、
私は無意識に彼の背中に手を当てさすった
傷ついてるだなんて誰が知ってるだろう
彼はちゃんと傷つき泣いてるのに、
それを人に知られず吐き出してるだなんて
どれくらいが知ってるだろう。
「ちゃんの傍やと素直やわ俺」
へへ、と鼻を赤くした彼は
先ほどのように照れくさそうに笑う
だから私も、笑った。
こんな貴方は誰も知らない
優越感?
そう思うとドクンと高鳴った心臓の鼓動
end.