第1章 中間淳太
「帰んなや」
ぎゅ、と握られ引き止められた。
ギリ楽屋の中から引く
廊下で長く立ち止まるわけにもいかず、
さっさと中に戻る。
「ああ〜帰って来た〜」
おかえりーと重岡くんがゲラゲラ。
その横でメイク直しする濵ちゃんと
邪魔する望くん。
「んもう!!こっち来て」
またもぐいっと強く引かれ、
楽屋を出る。
連れてこられたのは、
人気の無い物置部屋?みたいなとこ
小道具がたくさんあった。
『どうしたの?淳太くん』
「どうしたのちゃうやん、
あれやん。小瀧の、あれや…」
ゴモゴモ話すからよく分からないが、
おそらく転び掛けたあの時の事を
淳太くんは言ってるのだろう
「やっぱ楽屋連れて来るもんちゃうな」
『だから行かないって言ったじゃん
こうなるの分かってたから…』
まだ駆け出して数年、
頑張り時な淳太くんを支えなくちゃ
いけないことは十分分かってる
だけどこうも甘えただとなあ…
「どうせ小瀧にときめいたやろ
こいつばりイケメンやんって思ったやろ」
『ドキドキしたけどときめいてませーん』
「ほらぁあ!ドキドキしてるやんかぁ…」
若さには勝てへんよ俺、と
なんか淳太くんが淳太くんではなくなってきてる
『転けて支えてもらった上に、
顔が至近距離にあったらドキドキぐらいするよ』
「開きなおった〜〜」
『なんなの?』
ハッキリ言えばいいじゃん、
妬いたんやって。
遠回しに色々文句を言うから、
結局喧嘩になるんだよ
「好きやって、言うとんねんあほが!」
end.
『やっぱ年下もいいよねえ…』
「え?は?うそやろ?」
『冗談だよ、ごめん淳太くん』
「小瀧なんてテレビ出演減ればええのに!」
『だめだよそんなの』
「嘘だけど嘘ちゃう…」