第17章 ありがとう
「…………や、やっぱりお母さんとディナーがいいです!そうしましょう!『だーめ。また逃げようとしてるでしょ』ひゃっ!?」
お母さんを引っ張って出口に戻ろうとしたら背後から、というか思ったより近いところから声をかけられた
思わずびくびくしながらゆっくり振り返って見上げると
「………和さん。、、、お、お疲れ様です」
「はいはい。お疲れ様。、、、ンフフ」
ニヤニヤしてる和さんにじろじろ見られて
そろぉー。っと視線を外す
「で?母ちゃんに騙されて来ちゃったの?こんなところまで」
「あんた人聞き悪いわね」
睨みつけるお母さん
お母さんの言葉には返事をせずに視線を外した先に頭を傾けて目線を合わせてくる和さんに思わず反対方向を向いてしまう
「あらあら。……クフフっ」
もう完全オフモード。いつもの和さんに戻ってるのに視線が合わせられない!
無理!
「ふーん…………なるほどね。やーっと分かったわ。あなたが誘っても来なかった理由」
「………うっ」
なんでも見透かしてしまう和さん
今まで頑張って内緒にしてきたのに
「何あんた知らなかったの?」
お母さんにそんな風に言われて和さんは、まー。なんか面白い理由があるんだろうなとは思ってたけど。と続けた
「おもっ!!……しろくはないです。……やめて。和さん。今は見ないで」
ずっと覗き込んでくる和さんから逃れようと鞄で顔を隠したらその鞄を奪われた
「あ!和さん!」
「じゃあ楽屋行こっか。…母ちゃんはどうする?」
「私は帰るわよ。じゃあ由梨ちゃんまたね?ごめんね。意地悪バカ息子で」
なんかすごい言葉を聞いた気がするけどもうそれどころじゃなくて
お母さんはすたすたと出入り口に向かって消えていった
「さて。…じゃあどうする?ここはお客さん居ていたたまれないでしょ?楽屋に来た方が安全じゃない?」
いまだにニヤニヤが抜けきれない顔をして頭をぽん。と撫でてくる和さんの案を受け入れる術しかもう私には残ってなかった