第17章 ありがとう
そして一番最後に和さんが来て
「和ーっ!!」
お母さんが楽しそうに手を振っているのを和さんは、はいはぃ。って言った感じで頭を下げて
そして
目が合った
なんか一瞬時が止まった気がして
息が止まって
和さんから目が離せなくて
だんだん頬に熱が溜まってきて
「む、、無理ですっ」
和さんのうちわで顔を隠したら
「わっ!!ここにも和さん!」
また表を顔側にしちゃって慌てて膝の上に置いて両手で顔を隠す
指の間からちょっと見える和さんは手で口元隠してて
あ、、、多分あれは笑われてる
「うぅ………」
声にならない声で涙目に
その後和さんはまたちらっと見た後に直ぐに外行きの笑顔に切り替えてお客さんのいる花道へ手を振りながら歩いて行った
「和がめちゃくちゃ悪い顔してたわ。一瞬」
呆れ声のお母さんに憐れみの目みたいなのを向けられていた事に私は気付く暇もなかった
その後は比較的心穏やかで
何故かってその一度しか和さんはこちら側に現れなかったから
そしてそれぞれのソロ曲が始まって
いよいよ和さんの番
ちょっと可愛い曲調で
でも歌詞が
誰かに向けてる様で
「あれ、、、」
自惚れかな
「う、、、ひっく、、」
涙が止まらない
「この曲ね。アルバムにもう入ってるんだけど。聞いた時直ぐ由梨ちゃんに向けて言ってるのかなって。……だからここに連れてきたのは私のお節介。ごめんね?」
ぶんぶん首を振って最後の言葉を否定した
「ありがとうございます。連れてきてくれて」
ぽろぽろ泣いてる私を見て優しく背中をとんとんしてくれるお母さん
和さんの曲はまるでいつもの穏やかな日常を表している様で
色んなことが走馬灯の様に甦る
優しく向けてくれる笑顔も
ちょっとイタズラする時の顔も
抱き寄せてくれる時に目を細めた姿も
全部優しい空間で
そんな和さんとの日常が溢れる様な歌詞で
涙が止まらなかった