第10章 親友=心友
普段極力そういう言葉を伝えないように振舞ってきた
お互い同じ職場環境な上当然どうしても一緒に居られる時間は僅かな時もあって。
それがしょうがないで片付けられてしまう世界に私達はいる
たとえどちらかが熱を出そうが代わりなんて居ないので後ろ髪を引かれながらの現場入りは覚悟していなければいけない。
しかも私達は夫婦であって、私は和さんの妻。
和さんが困るようなこと。絶対に言いたくなかった。
「ごめんなさい。なんでもないです」
色々走馬灯の様に考えを巡らせて即座に謝った。
そうすると何故か、ふふふ。と含み笑いの様な声が聞こえる。
この笑い方は…多分ニヤついてる。
「あ、あの。…困らせてしまってごめんなさい」
もう一度そう謝ると今度はクツクツと堪える様に笑い出すのでどうしたものかと押し黙ると何故か和さんが謝り返してきた
「いや、俺こそ。ごめんね?そう言うと思って秋ちゃんに頼んだとこあるし」
え?
いや、何のことかさっぱりなんですが。
また和さんの謎発言に困惑しながらも、一体どういうことでしょう。と聞くとまたフフと笑いが溢れるように話し出した
「由梨はね。なんでも溜め込む癖があるから。ちゃんと言いなさいよ。口があるんだから。秋ちゃんにしろ俺にしろ…いうきっかけ作らないと甘えてこないんだから。」
あぁ。
この人はきっとこうやって私を甘やかしてダメにしようとしてるんだな。
普段わがまま沢山聞いてもらってるのに。
何故さらに甘えたくなる状況を作るのか
結局は私は和さんに遊び尽くされている
そしてそんな和さんがやっぱりかけがえのない私の旦那さんであり最愛のパートナーである事に胸が熱くなった
「今も充分甘えてます。これ以上は専門外です」
ふざけてそう言うと、えー。つまんない。と拗ねたようなことを言うのでいつのまにか移ってしまった和さんと同じ笑い方で、フフ。と笑ってしまう
「今日も帰れなさそうですよね?お身体に気をつけて。ちゃんと寝れる時に寝てください」
そう言って切ろうとすると、はいよー。と軽い返事をされたので迷いなく切ることが出来た
シャワーを浴びてベッドに潜り込む
お布団からは和さんの匂いがほのかに残っててそっと抱きしめてみた
あぁ
早く本物を抱きしめたい
fin