第3章 坂田銀時:結婚記念日(甘裏)完結
「すごーい!!銀時!!絶景っ」
「おー、こりゃ絶景になるな、うんうん」
無事に俺はある程度稼いだ金で旅館までの交通費や諸々を出せてやれた
あ、ちゃんとお子ちゃま二人にもお給金あげてるからね、うん
頷きながら顎に手をあてる俺に不満げな
「銀時…それお風呂。私が言ってるの、こっち。景色」
「そうだよ?いい景色になるだろなーって。の裸越しに」
「露天風呂付き客室なんて取らなきゃ良かった…」
「違うぞー!くん、男のロマンだからね!君の選択に間違いなどないんだぞォォォ!!グッジョブ!!!」
親指を立てて彼女を褒め称えたつもりだったが、げんなりした顔で返された
え?なんで?
「ま、いいや。せっかくだし楽しもう!!」
「あれ?なんか投げやり感半端ないんですけど?俺のせい?」
「いいの、いいの!さあ!このお風呂もいいんだけど、ここは大浴場も素敵だったはずなの。行ってみよ?」
「…お、おう」
はこういうところがたまにある
喜怒哀楽の怒と哀を無理矢理押し殺しているような
腑に落ちないことがあった時もそうだ
気にしないように意識しているような
自らを流してしまう感じだ
本人自体が流してしまいたい事なのだろうと、ほじくるのを避けてはいるが抱え込みすぎてはいないか心配になる時がある
「あっ、銀時って大浴場で歯磨きしたいタイプ?」
「んー俺は洗面で歯磨きしたいタイプ」
「そっか、じゃあ銀時用の歯ブラシいらないね」
「一泊の割に荷物デケェと思ったら…持ってきたのかよ」
「うん」
「俺が使うにしても、そういうのってカミソリとかと一緒に置いてあんじゃねェの?」
「うーん、あるとは思うんだけど…簡易のやつって磨いた気にならないでしょ?せっかく二人きりで旅行に来れたから、少しでも気持ちよく過ごしてほしいと思って」
いつもこうだ
自分のことより俺のこと
自分以外の奴を優先する
本人に一度そのことについて言及したことがある
もっと自分本位でいいんじゃないかと
そしたら彼女はこう答えた
「私?私はじゅうぶん自分本位で生きてるよ」
俺にはその時意味がわからなかったが、嘘を言っている様子もなかったのでそれ以上は何も言わなかった