第2章 土方十四郎:俺だけを(甘裏)完結
「?」
もう一度部屋の奥へと歩いていくを横目に灰皿へと煙草を置く
スタスタスタスタスタスタ
「どうした?」
声をかけると壁だと思っていた場所をカパッと開いた
押し入れの横はパッと見、壁に見えていたがどうやら窓を隠すための2重窓だったようだ
壁のような窓を開け、その奥にある硝子窓を開けようと押している
こういう場所ならではの、全部が開かない仕様になっていて普段清掃員もめったに開けないからか固くなっていた
「んんんっっっ!!!」
必死に窓を開けようと試みるも全く埒が明かない様子だ
「おい、大丈夫か」
「あ、なんとか…はい。あれ?無理かな」
それに見兼ねて俺も窓へと立ち上がり向かう
「どいてろ」
「はい、ありがとうございます」
グッと力を込めるとギギッと鳴り、少しだけ窓に隙間が出来た
「こんだけしか開かねぇな」
「いいんですいいんです。ありがとうございます」
「でもこれ…外、見えんのか?天気はさっきと変わんねぇぞ」
3センチ程しか開かなかった窓からはほんの少し空が見える
到底景色が見える感じではなかった
「あ!大丈夫です、見えなくて。これぐらい開いてればじゅうぶんですから」
「あ?」
何がじゅうぶんなんだ?と言いたげにを見下ろすと思ってもいない返答がきた
「私、昔煙草吸ってたんですよ」
「は?」
「やめてからもう何年も経つんですけどね」
「はぁ…」
「だからまた吸いたくなるってことはないんです」
「あぁ…」
「よく喫煙OKなお店探すのに苦労しました」
「へぇ…」
「煙草の銘柄もちょっと珍しいやつだったので、外出中に切らした時はこれまた探すのに苦労しました」
「おぉ…」
「煙と匂いが少ないシリーズのやつ、知ってます?あ、こっちには無いのかな」
「まぁ、あるっちゃあるが…」
「あ、そうなんですね!そのシリーズでシトラスメンソールの香りがするやつがあるんです。それだったんですよ」
「ふぅん…」
「その香りが私は好きだったんですけど、周りの男性達にはあまり好意的に思われなくて」
だから何なんだよって顔を隠さずする
まあ、まさかが見た目に似合わず同じ喫煙者だったという事実には少なからず内心驚いてはいるが