第2章 土方十四郎:俺だけを(甘裏)完結
空いてる部屋はここだけだったため強制的に選ばざるを得なかった
…渋いな、これ
旅館のような和室風
ガッツリ全部が畳だった
布団が敷いていないところを見ると、旅館イメージを忠実に再現して奥の押入れにでも入っているのであろう
まあ、今回必要ないので出すこたねぇな
なんて考えていたら
スパーン!とその押入れを小気味良い音でが開けた
「っおい!」
「はい?」
なんですか?と言わんばかりの顔で俺へと振り返りつつ、布団をヨイセッと引っ張り出そうとしている
「何やってんだよっ!!」
「何って、布団をお出ししようかと…」
「だから何でそんなことしてんだって言ってんだよ!!」
「?…寝ないんですか?」
「はあああああーーー??」
寝るってなんだよ寝るって!
そんなことしにきたんじゃねぇだろが!?
「ねねねねねねね、寝るって!?寝ねぇし!!」
「あ、そうなんですか。私はてっきり…」
「はあ!?お前そんな簡単に」
「沖田さんみたいにたまには昼寝したいのかと」
「…は?」
さすが真面目ですね土方さん、とか言いながら押し入れの襖を閉めた
「すいません、勘違いしちゃって…」
申し訳なさそうに言いながら、旅館によくあるポットとお茶セットで手際よく用意してくれる
「いや、別に…」
「電話ありますね。かける前に少し休みますか?結構歩きましたし…」
「あ、ああ…」
大きな声を出してしまった自分になんとなく気恥ずかしくなり、木の座椅子へ腰掛けテーブルについた
カチッカチッとマヨ型ライターで煙草に火をつけようとしていると横からスッと灰皿を出す
どうぞ、と一言添えながら入れ終えたお茶も出してくれる
「わりぃな…あ、吸っても」
「どうぞ」
言い切る前にまた一言どうぞ、と微笑んで向かいの座椅子へも座りお茶をすする
お水の世界以外で普通にこんなことが出来る女が周りに居らず、やっぱ変な女だな…などと思っていた
実際変なのは周りの女であってがちょっと気の利く大人だというだけなのだが、俺にはわからないことだった
特殊な人間ばかりのこの世界で生きてきたのだから
ふぅーっと煙を一つ吐き出すと
「あ!」
俺の顔を見て何かを思い出したように立ち上がった