第1章 坂田銀時:俺だけを(ギャグ甘裏)完結
そういえば一度だけを家まで送っていかなかったことがあった
確かあの日は珍しくまとまった金額が貰える仕事にありつけ機嫌よくプラプラしていたら、運命的にもと出会って嬉しくて奢るからと飯に誘った
夕方からゆっくり飯食ってのんびりデザートまで堪能してたら外もすっかり暗くなっていた
いつも通り送っていくと言うと、これまたいつも通り「すぐそこだし大丈夫です」と遠慮してきた
んでこれまたいつも通り「俺が送りたいからいいの」と無理矢理送っていこうとした時どこから現れたのか納豆臭い女が俺の腕に飛びついてきた
「きゃー!銀さんったらまたこんな女連れて私にヤキモチ妬かせようって魂胆ね!よし乗ったわ!乗ってやるわよ!ていうか乗っちゃったわよそれ!妬いたわ妬きまくりよ!もお!どうよ!これで満足!?私はまだまだ足りないわよー!銀さんが足りないのー!どうしてくれるのよ!もおー!私達の愛に天井なんてないんだからぁ!!」
と訳の分からない事をほざきやがるド変態女を引き剥がそうとしている間にが「あ、じゃあまた」と帰って行ってしまったのだ
そのあとも引き剥がすのに相当な時間がかかってしまいゼェゼェ言いながらの家に念のため向かった
窓を確認すると電気がついていたから無事に家にたどり着いたんだと安心して帰っちまった
あの時…は部屋に逃げ帰って泣いていたんだな…
それに気づかず俺は…
「わりぃ、…ごめんな」
胸ぐらを掴まれたままに謝った
さっきまで違うことで謝ろうとしてたのに
俺…謝ることばっかだな
マダオどころの騒ぎじゃねぇわ
バッと俺を掴んでた手を振り払い、チッとまた舌打ちしてからへと一瞬目をやり
「あとでまた来る」
そう言い残してあいつはパトカーがあるであろう先へ颯爽と歩いてった
なんだよ、なんなんだよ
かっけーな
俺なんかと全然ちげーわ
と目を合わせることが恐くなり下を向いていると、ふと頬に手が触れた
「…ありがとう、助けてくれてありがとう、銀さん」
頬に添えられた手はまだ少し震えていた
その手に自分の手を重ねて触れ
ゆっくりと顔を上げと目を合わせた
彼女は責めるどころか俺を気遣い少し微笑み
もう一度「ありがとう」と言った