第1章 《裏》甘ったるい声【河上万斉】
万斉さんは、私と距離をおくと、
何事も無かったかのように掃除を始めた。
だが、まだ私の体は疼いていた。
夏希「河上さん…。」
すると、私を呼ぶ声が聞こえた。
また子「あ、いたっす!夏希、晋助様がお呼びっすよ!」
夏希「?晋助さんが?」
晋助さんが私を呼ぶなんて…。
そう疑問を持ちつつ、私は晋助さんの部屋に向かった。
万斉「……。」
晋助さんの部屋の襖を開けると、
そこには三味線を持った晋助さんがいた。
夏希「晋助さん、入ります。」
晋助「あぁ。急に呼び出して悪かったな。」
夏希「いえ、かまいませんよ?
それで、ご用件は…。」
晋助「夏希、お前は三味線は弾けるか?」
夏希「人並みには、おそらく…。」
晋助「じゃあ…俺の唄に乗れ…。」
夏希「はい。」
そう言って、
私はすぐそばの三味線を手にした。
それを見計らった晋助さんは、
三味線を弾き始めた。
合わせやすい音だったので、
私も合いの手をすぐに入れる。
静かな空間、
三味線の音だけが響いた。