第2章 02
何をかは分からない。
多分苗字さんの彼氏になるかもしれない男にかもしれない。
許せなかった。
黙って聞いていた黒子が黄瀬君と俺を呼んだ。
澄んだ水色の双眸と目が合うと、お気に入りのバニラシェイクを飲みながら何でもない事のように黒子は言った。
「それを嫉妬と言うんですよ」
もう否定は出来なかった。
黒子に習って残り少ないウーロン茶を飲み干し、頭と心を落ち着かせた。
冷たい飲み物のおかげで少しずつ荒れた心が静まっていく。
嫉妬か、とぼそりと小声で呟くと、ずっと感じていた不可解な感情がしっくり当て嵌まる気がした。
なんとなく窓の外を眺めてこの嫉妬心を打ち消すにはどうすればいいのか考えを巡らせてみたが、ぼーっとした頭ではいい案は思い付かなかった。
黒子と別れて家に帰ってからも苗字さんが頭から離れる事はなくて、しかし妙案は浮かんでこないままだった。
憧れた事はある。
青峰に憧れ、焦がれたからこそ俺はバスケを始めた。
今までもこれからも青峰のバスケの才能に尊敬しても妬む事はない。
感じた事のない気持ちをどう対処していいのか分からない。
人生で初めての嫉妬だった。