第8章 08
ドアにかけた手にぐっと力を込めて車内に滑り込んだ。
俺の後を追うように完全に閉まったドアを見て、今度こそ間に合ったと実感に浸った。
突然現れて飛び乗った俺を見ていたクラスメイトたちが驚いて呆然としていたが、今ではわーわーとホームで賑わっているのが聞こえる。
明らかに冷かしだと分かったので、皆の方は見ないでおいた。
見てしまうと照れに負けて決心が鈍ってしまいそうだった。
揺れる事もなく静かに発車した新幹線に、苗字さんと俺の二人。
飛び乗ってすぐに閉まった扉にもたれ掛かって、未だに流れる汗を袖で乱雑に拭った。
走り出して景色の変わった車内は、駅のホームで冷やかしていたクラスメイトたちの声はもう聞こえず静かだった。
とりあえず発車時刻に間に合ってようやくほっと息をつく。
けれど走った事で乱れた息はまだ整わない。
こんなに全速力で走るのは試合くらいではなかろうか。
それくらい必死なんだと自分の気持ちを再確認する事となった。