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【黒子のバスケ】Select me

第7章 07



流れる汗で濡れた前髪が視界を遮るので、邪魔になって掻き上げた。
早く苗字さんの元に行きたいんだ。
会って言いたい事があるんだ。
気持ちを隠してきた見送るだけの意気地なしな弱い自分とはもうさよならだ。
そんな自分は、もういらない。

ホームに辿り着いて左右を見る。
奥に見慣れた人集りを見付けて間に合った事に安堵したのも束の間、苗字さんを見送りに来ているクラスメイトたちに向かって足を踏み出したところで、発車を知らせるベルがけたたましく鳴り響いた。
せっかくここまで来たのに間に合わないと言うのか。
嫌だ、このまま行かせたくない。

右肩にかけた荷物が重い。
厳しい合宿での練習に耐えてここまでの道のりを走ってきた足はぱんぱんに腫れて痛い。
それでも力を振り絞って走った。

ドアが閉まろうとしてスライドし始める。
一歩下がって手を振るクラスメイトの間を割り込んで、閉まりかけたドアに手をかけた。
待ってくれ、俺の大切な人をまだ連れて行かないで。

もう先延ばしなんてご免だ。
今更だけど気付いたんだ。
気付けたんだ。
だからもう少しだけ待ってくれ。
頼むから間に合ってくれ。
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