第5章 05
昼休みに俺は女子に囲まれて言われるがままになっていた。
ヘアアレンジで盛り上がっていた女子達が、黄瀬君もと言って俺の髪で遊んでいる。
持ち込んだヘアアイロンでストレートにしたり、後頭部で結ってみたり、逆毛を入れて盛り髪をしてみたりと大いに楽しそうだ。
モデル業のせいかファッションを楽しむのが好きな俺は、ヘアアレンジも嫌いじゃない。
むしろ好きで、鏡に映る自分の髪が次々に変わっていく様を見るのは楽しかった。
仕事でヘアセットしてくれるスタイリストを上手いなと思いながら眺める事はあったが、こうしてクラスメイトに髪をいじられるのはなんとも新鮮だ。
プロでなくとも上手いものだなと感心した。
「みんな何してるのー?」
次はどんな髪型にしようかと楽しそうにはしゃぐ女子達に、食堂から帰ってきた苗字さんが寄ってきた。
昼食を終えて戻ってきた苗字さんは空腹感を満たしてどこか満足そうだ。
皆に髪をいじってもらってると説明すると、楽しそうだねと笑う苗字さんの手首に付けられているシュシュが目について、使わないならそれ貸してと指差した。
いいよと手渡された小さめのシュシュはレースをあしらっている白い物で、苗字さんをより可愛く見せるんだろうなと思った。